自治体の広報力の高め方ー千葉県鋸南町役場で実施した広報研修レポート(千葉日報デジタル連携)

近年、自治体においても情報発信の重要性がますます高まる中、「SNSの使い方がわからない」「伝えたいことが住民に届かない」といった悩みを抱える職員の声が多く聞かれます。
そうした現場の課題に応えるべく、2024年11月18日(月)に株式会社千葉日報デジタルと連携し、千葉県鋸南町役場にて「SNSを活用した広報活動」をテーマに60名を超える職員に向けて広報研修を開催しました。
本記事では、研修実施の背景から当日の内容、参加者の声までを紹介しながら、「自治体が広報力を育てていくために何が必要か」を具体的に掘り下げていきます。
なぜ今、自治体に広報研修が必要なのか?
情報発信を担う自治体職員は、限られた人員と時間と予算の中で「正しく、わかりやすく、タイムリーに伝える」役割を求められることがほとんどです。特にSNSやWebメディアを活用した発信が当たり前となった今、「広報の専門知識を学ぶ機会がないまま、何となく発信している」というケースも少なくありません。
千葉県鋸南町役場でも、事前アンケートで次のような課題が多く挙げられました。
- SNSは見る専門で、発信の仕方がわからない
- 自治体アカウントをうまく活用できていない
- 住民に伝わる表現や見せ方が難しい
- 議会から「もっと広報を強化すべき」と言われている
こうした背景のもと、広報に関わるすべての職員が“伝える力”を基礎から学び直す場として、今回の研修が企画されました。

千葉県鋸南町役場で実施した広報研修の概要
広報研修は、千葉県鋸南町役場の全体的な取り組みとして実施され、午前・午後あわせて63名の職員が参加。
講師は、企業・自治体向けの広報支援を行う弊社代表・山田佳奈恵が務めました。
【実施概要】
・実施日:2024年11月18日
・時間:90分(午前/午後の2回開催)
・対象:各課の広報・情報発信に関わる職員(20代〜60代)
・主な内容:
- 広報とは何か?
- 信頼を得る情報発信の考え方
- 自治体SNSの活用法と成功事例
- SNS広報で力を入れるべきポイント 等
研修は座学にとどまらず、実際の投稿例を用いたワークやクイズなども用いることで、実践的な構成で行われました。
(参考:PR TIMES 掲載記事)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000072164.html
現場の声に見る、自治体が抱える広報のリアル
参加者からは、研修前に次のような課題意識が寄せられていました。
- 情報発信しても集客につながらない
- 高齢者に届く表現や手段がわからない
- 議会だよりを読んでもらうにはどうすればよいか悩んでいる
- SNSは見るだけで、投稿が怖いと感じている
- ターゲットの明確化や、わかりやすい文章の書き方に自信がない
このように、発信内容や表現方法だけでなく、そもそも「どのような広報が必要なのか」という視点に迷いを感じている担当者が多いことがわかりました。

参加者アンケートで見えた“変化”と“手応え”
研修後のアンケート結果では、次のような評価が得られました。
- 内容の有用性:「とても役に立ちそう」「役に立ちそう」と回答した人が95%
- 講師の説明・資料のわかりやすさ:「わかりやすかった」が87%
- 満足度:「とてもよかった」「よかった」が合計87%
参加者から寄せられた感想の一部を紹介します。
「SNSの発信に対して前向きになれた。思ったより工夫できることが多いと気づけた」
「情報を伝える“目的”を考える大切さを学べた。町民に伝える文章や写真も見直したい」
「他自治体や企業のSNS運用を参考に、自分の担当業務にも広報視点を取り入れたい」
「XやTikTokなども勉強し直して、時代に合わせた伝え方を模索したい」
広報は専門職ではなく、多くの場合、兼務で担当している自治体が大半です。
今回のように、「伝える」を学び直す機会を持つことは、職員のモチベーション向上にもつながります。




広報は“情報発信”ではなく“信頼構築”である
今回の広報研修の中で最も伝えたかったことは、「広報は、単なる発信ではなく、住民との信頼関係をつくる活動である」という本質的な視点です。
どれだけSNSのフォロワーを増やしても、伝えたい人に伝わらなければ意味がありません。また、一方的な情報提供ではなく、「共感」「参加」「信頼」を得るための表現と姿勢が求められます。
具体的には以下のような視点が重要になります。
- 住民の目線に立った情報整理と言葉選び
- 担当者個人ではなく、町全体として一貫性のあるトーンとマナー
- 業務情報も“暮らしにどう役立つか”という切り口で伝える工夫
SNSやWebはツールにすぎません。誰に、何を、どう伝えるのかという「情報設計」があって初めて、広報活動が“機能するもの”となります。

自治体広報に求められる視点とこれから
今後、自治体における広報力を高めていくためには、以下の3つの視点が欠かせません。
- 発信力ではなく「伝わる力」を意識すること
情報を出すことが目的ではなく、住民の心に届く表現や構成を工夫する視点が重要です。 - SNSなどの“手段”に依存せず、「何を伝えるべきか」を起点に考えること
ツールありきではなく、自治体として届けたい価値やメッセージを軸に設計する姿勢が求められます。 - 「広報は一部の担当者の仕事」ではなく、全職員が主体的に関わる組織文化を育てること
情報発信は、すべての行政サービスとつながっています。各課が連携し、住民目線での広報を推進する体制づくりが鍵となります。
今回実施した千葉県鋸南町役場での広報PR研修は、広報に対する基本的な理解を深め、現場の意識や行動にポジティブな変化をもたらす機会となりました。
こうした広報研修をきっかけに、各自治体がそれぞれの“らしさ”や地域資源を活かしながら、住民や関係団体との信頼関係を育てていく取り組みが広がっていくことを願っています。

※こちらの内容は、グラヴィティPRが千葉県鋸南町役場向けに実施した広報PR研修をもとに構成した実例コラムです。
広報研修の導入をご検討の自治体様は、下記よりお気軽にお問い合わせください。